【特別企画 40歳の減量記録 #1】105キロの男が48日でやったこと|体重より先に、バスタオルが変わった

深堀シリーズ

ポケモンには草タイプがいて、炎タイプがいて、水タイプがいる。

その分類でいくなら、私はメタボタイプである。

過去形ではない。今もそうだ。15年ほど、ずっとこのタイプで戦っている。得意技は座ること。弱点はポテトチップスと炭酸飲料。そして15年経っても、一度も進化していない。

酒は飲まない。その代わりに食べて、飲んでいた。ポテトチップスとジュースが好きだった。好きだった、というより日課である。毎日食べて、毎日飲む。それを15年続ければ、体は素直に応えてくれる。

腹が出ている。

この言い方がいちばん正確だと思う。どこかが急に壊れたわけではない。少しずつ前に出てきて、気がついたら絵に描いたようなおじさん体型が完成していた。

痩せなきゃな、とはずっと思っていた

最初に書いておくが、劇的な出来事は何もない。

医者に勧められたわけでもない。誰かに何か言われたわけでもない。ある日鏡を見て涙した、というような場面も存在しない。

ただ、思ってはいた。それも2年3年という話ではなく、正直なところ、ずっと思っていた。

思わせていたものは、3つある。

ズボンが、どこにも合わなくなった

まず、昔履いていたズボンが入らなくなった。

これだけなら誰にでも起きる話だが、私の場合はここから先が面倒である。無駄に身長が高い。そして足が細い。

だからウエストを上げると、足回りが余る。腹に合わせて選んだズボンは、足がぶかぶかになる。逆に足の線で選べば、ウエストが入らない。

どちらを取っても、合わない。

体型に合う一本を探すのに毎回苦労していた。似合うかどうかの話ではない。単純に、私の体に対応する既製品が減っていく。

これはずっと不便だった。そして不便は、放っておくと生活に馴染む。馴染ませていた。

旅行の写真が、正直だった

もう一つは写真である。

このブログを書いている都合で、旅行中はよく写真を撮る。そして撮られた写真というのは、こちらの気分をまったく汲んでくれない。

二重顎になっている。

腹が出ていることも、はっきり分かる。鏡は角度を選べるが、家族が撮った写真は選べない。楽しかった旅行の記録の中に、自分の体型の記録も等しく残っていく。

ただ、ここで救いの手が差し伸べられる。

私が使っているのは Google の Pixel である。つまり、消しゴムマジックが使える。写真に写り込んだ余計なものを、指でなぞるだけで消してくれるという、あの機能だ。背景の通行人、邪魔な電線、視界に入るゴミ箱。なぞれば、なかったことになる。

理屈のうえでは、二重顎もこれで消えるはずである。

指でなぞれば輪郭がすっと収まって、実物より数キロ痩せた男が出てくるのだろう。ジムに行く必要はない。レッドブルをやめる必要もない。指1本で痩せる。

世の中は15年で、指1本で顎を消せるところまで来た。

技術はそこまで進んだ。折りたたみの携帯を開けば、AIが人間の輪郭を書き換えてくれる時代である。15年前には存在しなかった機能だ。

そして私の腹は、その15年を片時も離れず、私と一緒に過ごしてきた。

旅行にも、出張にも、会議にも、全部ついてきた。世の中が顎を消す技術を手に入れていく15年間、こちらは一度も離れなかった。

だから写真を見るたびに、思っていた。

そろそろ、こいつとお別れしなければならない。

15年も連れ添った相手である。情がないとは言わない。ただ、こちらにはもう別れる意思がある。

問題は、向こうにその気配がまったくないことだ。

授業参観で、採点されているのは子どもではない

3つめは、子どもが大きくなってから出てきたものである。

授業参観や学校行事が、年々増えてきた。そういう場所に行けば、当然ほかの親も来ている。

ここは正直に書く。私は、ほかの親を見ている。

あの人はこう、この人はこう、と勝手に採点している。悪意はない。ただ目に入るし、頭の中で判定は勝手に動く。

ということは、当然こうなる。

私も、採点されている。

しかも採点しているのは親だけではない。**子どもたちが見ている。**息子の同級生が、娘の同級生が、教室の後ろに立っている大人を見て、それぞれ何かを思っている。

自分が子どもだったころを思い出すと、答えははっきりしている。

「〇〇くんのお父さん、かっこいいね」

そう言われたら、嬉しい。そして腹の出た父親を友達がどう言うかも、だいたい想像がつく。私は子どもの頃、まさにその側で誰かの親を採点していたのだから。

ちなみに髪は、ふさふさである。ここは運がいい。

髪は運よく残った。腹は、運ではなく私が作ったものである。

そして自分で作ったものは、自分で戻すしかない。

思っていて、動かなかった。

きっかけは、中国のプロテインだった

では何が変わったのか。

出張中の、たわいもない雑談である。

現地のスーパーに入ったとき、たまたま中国のプロテインを見つけた。そこから筋トレの話になり、筋トレの話は、どうやったら痩せられるのかという話になった。

痩せていない人間同士の会話である。

出た結論は、こうだった。

やはり運動しかない。食事も制限しないといけないだろう。ただ、食事制限だけだと**我慢だけになってつまらない。**だったらブーストさせる意味で、ジムに通ったほうがいいのではないか。

そこまで話して、思った。

——ここまで来たら、やるか。

「ここまで」は、会話のことではない

いま振り返って書いているのだが、あの一言が指していたのは、その日の会話ではない。

15年のことである。

雑談で出た結論に、新しい情報は一つもなかった。運動をして食事を変えれば痩せる。そんなことは15年前から知っている。ズボンが合わないことも、写真の二重顎も、全部分かっていた。

知っていて、やらなかっただけである。

つまりあれは、決意表明ではない。ずっと持っていた答え合わせが、たまたまその場で終わったというだけの話だ。出張先の棚に並んでいた中国のプロテインが、私の15年分の宿題を回収していったことになる。

動いた理由は、体ではなく時間だった

もう一つ、自分の中で効いた理屈がある。

私は在宅で仕事をしている。ただ、朝9時から夜7時までびっしり働いているわけではない。空いている時間が、ある。

ではその時間に何をしているかというと、正直なところ、くだらないことをしている。目的もなく画面を眺めて、気がついたら時間が過ぎている。

だったら、その時間を使ってみようかと思った。

40歳だし。

この一行が、たぶん全部だった。私がジムに行くことにした理由は、体への危機感ではなく、余っている時間の使い道である。痩せたいから始めたというより、時間があったから始めた。

そして帰国してすぐ、申し込みに行った。お盆の真ん中だった。

やっていること

ここから先は具体的に書く。ダイエット記事でいちばん役に立たないのは「頑張りました」という記述なので、やっていることを全部並べる。

ジムは水曜が休館日である。それ以外は、ほぼ毎日通っている。

ジムでの1時間15分

まず、ウォーキングマシンを25分。

機械に入っている減量向けのコースを選んでいる。歩くだけではない。時速4.2キロから6.6キロの歩行が続いたあと、時速8.3キロのジョギングが1分だけ入る。それを交互に繰り返す構成である。

歩いて、走って、また歩く。25分で汗はしっかり出る。

次に、腹筋マシンを15分。

まっすぐ起こす動きを5分。そこから体をひねって脇腹を使う動きを、左右それぞれ5分ずつ。合計で15分になる。

そのあと、プールへ移動して30分。

ここは順番を決めている。300メートル泳ぐ。水中ウォーキングを一周。また200メートル泳ぐ。ウォーキング。バタ足。ストレッチ。最後に100メートル泳いで、もう一度ストレッチ。

泳ぎは平泳ぎとバタ足である。バタ足は、腹まわりに効かせるために入れている。合計で600メートル。

なぜ、これ以上やらないのか

このメニューには、意図的に上限を設けている。

15年以上まともに動いていない体に、いきなり1時間のランニングやベンチプレスを入れれば、体のほうが先に音を上げる。その前に、変なところを痛める。実際、105キロの体でジョギングをすれば膝にはっきり負担が来る。

始める前にAIに相談したところ、返ってきた助言は**「最初の1か月はプールだけでいい」**だった。

正直、それでは物足りなかったので、マシンを足した。順番も自分で決めている。先にマシンで動いてから、プールに入る。そのほうがカロリーの消化がいいと思ったし、単純にそのほうが面倒がない。

ただ、そこから先は足していない。**筋肉ができていない段階で無理をして故障したら、元も子もない。**痩せるより前に、止まらないことのほうが優先される。

だから今は1時間15分で抑えている。体重が落ちて筋肉がついてきたタイミングで、そこから少しずつ負荷を上げていくつもりである。

嫌いな風呂と、嫌いなサウナに、毎回入っている

プールを上がったら、風呂とサウナに入る。

ここは誤解されたくないので、はっきり書いておく。ご褒美ではない。

私は大衆浴場が嫌いである。知らないおっさんと一緒に風呂に入る意味が、正直よく分からない。サウナも好きではない。熱いだけの部屋に自分から入っていく趣味はない。

それでも毎回入っている。理屈があるからだ。

プールから上がった体は冷えている。そこで風呂に入って温める。上がって汗を拭き、その状態でサウナに入って汗を絞り出す。出たら冷たいシャワーで一気に冷やす。

熱くして、冷やして、また熱くして、冷やす。

この温度差でカロリーを燃やしている。

好きだから入っているのではない。効くから入っている。ここまで含めて、だいたい1時間から1時間15分である。

1日1,000キロカロリーの赤字を作る

運動と並行して、食事も変えた。

まず**夜の白米をやめた。**炭水化物の量には、全体としてかなり気をつけている。

そのうえで、数字で管理している。

  • 私の基礎代謝は、1日あたり約2,000キロカロリー
  • 食事での摂取を1,500キロカロリー以内に収める
  • 運動で500キロカロリーを使う

つまり消費が2,500、摂取が1,500。

差し引き、1日1,000キロカロリーの赤字である。

体重を減らすというより、毎日この赤字を作ることだけを見ている。目標は体重ではなく、収支のほうにある。

48日で変わった数字

そして現在の数字である。

開始(8月中旬)直近差
体重105.5 kg100.5 kg−5.0 kg
体脂肪率32.0 %27.4 %−4.6 ポイント
筋肉量65 kg約 70 kg+約 5 kg

ここで正直に言っておきたいことがある。

体重は5キロしか減っていない。

48日間、ほぼ毎日ジムに通って、レッドブルを断って、夜の白米をやめて、それで5キロである。月に3キロちょっと。数字として、地味だと思う。

ただ、体脂肪率のほうを見てほしい。32.0%から27.4%へ、4.6ポイント落ちている。

体重の減りかたが物足りなく見えるのは、中身が入れ替わっているからだ。脂肪が抜けた分だけ、筋肉が乗ってきている。体重計の数字だけを見ていたら、ここは絶対に見えない。

そしてもう一つ、はっきり書いておく。

この数字でも、私はまだメタボである。

5キロ落として、体脂肪率を4.6ポイント下げて、それでもまだ範囲の中にいる。冒頭に書いたタイプは、まだ変わっていない。進化どころか、一歩か二歩、動いただけだ。

そしてもう一つ、計算が合った話をしておく。

体脂肪1キロを落とすには、およそ7,200キロカロリーが必要だと言われている。1日1,000キロカロリーの赤字を48日積み上げれば、理論上は6.7キロ分である。

実際の数字から脂肪の量を計算すると、開始時が約33.8キロ、直近が約27.5キロ。減ったのは約6.2キロだった。

設計値6.7に対して、実測6.2。

狙ったとおりに減っていた。逆算すると、実際に作れていた赤字は1日あたり930キロカロリーほどである。

数字より先に、バスタオルが変わった

ただ、私がいちばん驚いたのは体組成計の数字ではない。

体臭が、劇的に減った。

おじさん臭、と言われるあれである。正しくは加齢臭というのだろうか。
その匂いが、本当に薄くなった。

【写真④: 夕方の洗面所。タオルハンガーに無造作にかかったバスタオルと、西日の帯】

どこで気づいたかというと、バスタオルである。

風呂上がりに使ったタオルを、以前は翌日まともに使える状態ではなかった。今はそれがない。自分の体から出るものが変わったことを、いちばん早く教えてくれたのはタオルだった。

もう一つある。汗をかかなくなった。

これまでは、ずんぐりむっくりした体型だったせいで、少し動くだけで汗が出ていた。階段を上がる、荷物を持つ、それだけで滲んでくる。

それが、普段の生活では出なくなった。運動中は当然出る。出るべきときにだけ出るようになった、という感覚である。

体重が5キロしか減っていないのに、匂いと汗はもう別人だ。

数字は遅れてついてくる。先に変わるのは、こういうところである。

今、つまずいているところ

順調に来ている、と言いたいところだが、正直に書く。

最近、落ちるペースが鈍ってきた感覚がある。

きつくはない。メニューが苦しいわけでも、食事が我慢になっているわけでもない。日によってはがっつり下がるし、そのあと少し戻ったりもする。その繰り返しではある。

問題は、そこではない。

こなれてきてしまった。

最初の1か月半を、私はほとんど無意識で走ってきた。決めたメニューをこなし、決めた数字に収める。それが習慣になった。習慣になったぶん、意識が薄くなっている。

ここから先を落としていくには、もう一段、意識を入れ直す必要がある。同じことを同じ気持ちで続けていても、たぶん止まる。

慣れてきたことが、いちばんの壁になっている。

「痩せた?」と言われたときの、二通りの返し方

もう一つ、自分でも面白いと思っていることがある。

最近、人から言われるようになった。

「あれ、痩せた?」

パッと見て分かるくらいには変わったらしい。そして私は、この一言に対して返答を二種類持っている。

ある相手には、こう返す。

「そうなのよ」

別の相手には、こう返す。

「いや、そんなことないよ。変わんないよ」

同じ体で、同じ48日で、答えが二つある。どちらが本音かと聞かれると困る。たぶんどちらも本音ではなく、相手との距離によって自動的に切り替わっている。

家族からは、また違う言い方で来た。

「あれ、お腹ちょっと凹んでない?」

これは妻と子どもである。体重の話でもなく、痩せたかどうかでもなく、腹が凹んだかどうか。いちばん近くにいる人間の観察は、いつもいちばん具体的だ。

48日続いている理由

ここまで書いてきて、続いている理由がはっきりした。

好き嫌いが、一つも入っていないからである。

  • ウォーキングマシンの25分は、歩行と走行を交互に組んだコースを選んでいる
  • 腹筋は、まっすぐとひねりを分けて15分
  • プールは600メートルと水中ウォーキングを、順番を決めて回している
  • 風呂とサウナは、嫌いだが入る。温度差でカロリーを燃やすため
  • 食事は1,500キロカロリー以内。運動で500。赤字は1日1,000
  • 夜の白米をやめ、炭酸飲料もやめた
  • そして全体の量は、故障しないために意図的に抑えている

この一覧に、楽しいから、好きだから、という理由が一つもない。

全部、効くからやっている。逆に言えば、効かないことは何もやっていない。

私はもともと、旅行の計画を分単位で組む人間である。ホテルの周辺をストリートビューで歩いて確認し、動線を先に決めてから出発する。その作法を、今回は自分の体に向けただけだった。

気合いで続いているのではない。設計で続いている。

そしてこの話には、都合のいい部分もある。楽しいと思ってやっていないので、飽きるという概念が発生しない。つまらないことをつまらないまま続けるのは、案外、得意なのだ。

期限は、41歳の誕生日

目標を書いておく。

83キロ。

今が100.5キロなので、あと17.5キロである。そして期限を決めてある。**来年の3月。**私が41歳になるまでだ。

残りは約6か月。単純に割れば、月に2.9キロ落とさなければならない。

これまでの実績は、48日で5キロ。月あたり3.1キロである。

ぎりぎり、間に合う計算になっている。

ぎりぎりというのが、正直な感触だ。しかも先に書いたとおり、落ちるペースは鈍ってきている。ここから同じ調子で進んでくれる保証は、どこにもない。

進化には、まだ一段階も届いていない

冒頭に書いたとおり、私はメタボタイプである。

ポケモンは、だいたい3段階で進化する。最初の姿があって、一度進化して、もう一度進化して、最終形になる。

今の私は、第一形態のままだ。

体重を5キロ落とし、体脂肪率を4.6ポイント下げ、バスタオルの匂いまで変わった。それでもまだ進化前である。図鑑に載る姿は、何ひとつ書き換わっていない。

だから、これから先の予定を書いておく。

冬が来る前に、一段階目の進化ができているか。

そして来年の3月、41歳を迎えるときに、最終進化までたどり着けているか。

この2つが目標である。途中の経過も、その都度ここに書く。順調だったときも、止まったときも、両方書く。都合のいいときだけ更新される記録に、意味はないからだ。

15年間、一度も進化しなかった生き物が、半年で二段階上がろうとしている。

無理があるとは思う。ただ、経験値は毎日、ジムで稼いでいる。

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