【ポンコツのたわごと #14】24時間前の5分間、私は会議より座席を取る

ポンコツのたわごと

あまり人に教えたくない話を書く。

教えたくないなら書かなければいいのだが、書く。40代のおじさんには、知っていることを黙っていられないという持病がある。

座席指定で、みんな終わっている

ANAで出張の航空券を買うと、エコノミーでも座席指定ができる。窓側、通路側、真ん中。アジア便の機体は、2席・3席・2席の並びが多い。JALにはあまり乗らないので、そちらの事情は分からない。

私はここで、真ん中3席の通路側を選ぶ。身長188cmの人間にとって、通路側は足を少しでも逃がせる唯一の場所である。

そして、ほとんどの人はここで終わる。席を選び、当日その席に座る。それで何の問題もない。

私は終わらない。ここで選んだ席は、ただの仮置きである。

24時間前、画面の景色が変わる

フライトの24時間前から、オンラインチェックインができる。必要事項をウェブで入力すると、搭乗用のQRコードが出る。

このタイミングで座席指定の画面をもう一度開くと、景色が変わっている。プレミアムエコノミーのうち、誰も買っていない席が、選択可能な席として表示されるのだ。

買った人がいる席は選べない。空いている席だけが、エコノミーの航空券のまま選べるようになる。早い者勝ちである。

変わるのは席だけだ。機内食もアメニティも、エコノミーのものが配られる。

それでも、座った瞬間に分かる。腰を下ろすと、クッションが一段沈んでふわりと受け止める。エコノミーの、板に布を張ったような硬さがない。肘を置いても、隣の人の肘とぶつからない。背もたれは、後ろの人に気を遣うまでもなく深く倒れる。足元にはフットレストがあり、188cmの脚がようやく伸びる。

同じ機体の、数列前に進んだだけである。それなのに、世界が違う。

だから私は、出発の24時間5分前にはパソコンの前に座っている。会議があろうが関係ない。こちらを優先する。

日本の会議の大半は、5分抜けても結論が変わらない。変わるような会議なら、そもそも5分で終わっている。膝のほうが、会議より替えがきかない。

プレミアムエコノミーを積んだ機体で、24時間前にチェックインして座れなかったことは、記憶にない。

最初は、ただの偶然だった

この方法を、誰かに教わったわけではない。

ある出張で、好きな席が埋まっていた。仕方なく別の席を押さえたまま、出発の前日になった。ちょうど24時間前くらいに、ANAからチェックインの通知が届いた。そういえば席を変えようか、と何気なく開いた画面で、プレミアムエコノミーが空いていた。

あ、これ開くんだ。

それが最初である。偶然見つけたものは、2回目から儀式になる。今では通知を待たず、こちらから5分前に待ち構えている。

羽田から香港、家族4人で

家族旅行でもやる。

先日、羽田から香港へ向かう便で、4人分まとめて移した。4席とも取れた。

妻と子どもたちには、事前に「いい席だよ」とだけ伝えてあった。家族の反応は、「画面が大きい」くらいだった。

足元の広さでも、座席の幅でもない。モニターである。数万円分の差額を、家族は画面のインチ数で受け取った。188cmの膝の事情は、家族の誰にも伝わっていない。

【写真①: プレミアムエコノミーの座席と、前の席との間の足元の余裕(家族が写らない角度で)】

隣の人のことは、考えない

プレミアムエコノミーを正規に買うと、エコノミーとは数万円違う。私の隣には、その数万円を払った人が座っているかもしれない。

正直に書くと、そのことを考えたことはない。

知っている人は知っている。知らない人のほうが、たぶん多い。知らない人は正しく料金を払い、正しく指定した席に座る。**世の中は、そういう真面目な人たちで回っている。**私はその隙間に、5分前から座っている。

書いてしまった

ここまで書いて、気づく。この記事を読んだ人は、24時間5分前にパソコンの前に座るようになる。ライバルが増える。

自分で自分の首を絞めている。

ただ、路線はたぶん違う。読者の全員が、私と同じ日の同じ便に乗るわけではない。だから大丈夫だろう、と思っている。

もし次の出張で、24時間前ちょうどに画面を開いて、プレミアムエコノミーが全部埋まっていたら。そのときは、この記事を書いた自分を恨む。

そして真ん中3席の通路側で、188cmの膝を折りたたんで飛ぶ。

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