【海外旅行】カードの限度額は上げない。むしろ下げる|臆病だと言われても

持ち物・準備

海外旅行の準備を検索すると、クレジットカードについてはこう書いてある。

限度額は上げておきましょう。急な出費に備えて余裕を持たせましょう。高額な買い物ができるように準備しておきましょう。

私は逆をやっている。

出発前に、持っていくカードの限度額をわざわざ下げる。VisaとMastercardなら30万円ほど、多くても50万円。上限を100万円までに設定できるカードだけを選んで持っていく。

**金額は行き先によって変える。**東南アジアなら低めに、物価の高い国なら少し多めに。その旅で使う額から逆算して決めている。

なぜそんな面倒なことをするのか。書いていく。

「盗まれても止めればいい」と言うけれど

カードを盗まれたらどうするか。答えは決まっている。**カード会社に連絡して止める。**それだけだ。

ただ、この「止める」までが、海外だとやたら遠い。

日本にいれば、アプリを開いて数タップで済むかもしれない。だが海外では話が違う。まず、**通信が使えているとは限らない。**財布を盗られるような状況で、スマホだけ無事とも限らない。

繋がったとして、次は国際電話である。カード会社によっては、アプリだけでは完結せず、電話での本人確認が必要になる。**時差もある。**日本が深夜なら、繋がるまでに時間がかかる。

そして本人確認だ。生年月日、暗証番号、直近の利用履歴。動転している状態で、これを正確に答えなければならない。

その間、カードは生きている。

私が気にしているのは、この空白時間だ。

盗んだ側は、こちらが気づく前から動いている。財布を抜かれたことに気づくまでの時間、そこから連絡がつくまでの時間。その合計が、被害額を決める。

「補償される」は、補償が決まった後の話でしかない

ここまで書くと、こう言われる。

不正利用はカード会社が補償するのだから、限度額など関係ないのではないか。

それは、補償が確定した後の話である。

補償されるかどうかは、申請してみるまで分からない。カード会社は調査をする。時間もかかる。そして、結果が出るまで、その請求は明細に載ったままだ。

自分の使っていない金額が、自分の明細に並んでいる。それが補償されると決まるまで、こちらは待つしかない。

もちろん、大抵の場合は補償される。そこは疑っていない。

だが、**待っている間の落ち着かなさは、確実に発生する。**旅行中に、あるいは帰国してから、その通知を眺めて過ごすことになる。

限度額を下げるというのは、その不確実性そのものを小さくする行為だ。

30万円の枠しかなければ、最悪でも30万円である。補償の判断がどう転んでも、抱える不安の総量は最初から決まっている。

断っておくが、これは1枚あたりの話である

正直に書いておく。

30万円というのは、**1枚あたりの設定だ。**複数枚持っていけば、合計の枠はその分だけ大きくなる。財布ごと盗られれば、理屈の上ではそれが全部さらされる。

では意味がないではないか、と言われれば、半分はその通りだ。

ただ、実際に不正利用される場面を考えると、話は少し変わる。盗んだ側は時間との勝負をしている。何枚ものカードを、それぞれ限度額いっぱいまで順番に使い切るような手間をかける相手ばかりではない。1枚で足りなければ次、という動き方をされたとき、1枚あたりの天井が低いことは、それなりに効く。

完璧な対策だとは思っていない。天井を下げているだけである。

分散という選択肢は、検討した上で捨てた

ここで、当然の疑問が出てくる。

カードを分けて持てばいいのではないか。

どの旅行記事にも書いてある。1枚は財布、1枚はスーツケース、1枚はホテルのセーフティボックス。そうすれば全滅は避けられる、と。

考えた上で、私はやめた。

分散するということは、目の届かない場所を作るということだからだ。

ホテルの部屋に置いていく。スーツケースに入れておく。どちらも、朝出かけて夜戻るまでの十数時間、自分の管理外に置くということである。

観光している間ずっと、部屋に置いてきたカードのことを考えるのか。それは私には無理だ。

**盗難のリスクを分散した結果、置き忘れと部屋からの盗難という、新しいリスクを作っている。**そう思えてならない。

だから私は、全部を財布に入れて持ち歩く。肌身離さず、である。

**当然、財布ごと盗られたら全滅する。**それは分かっている。

分散を諦めた代わりに、**被害額の上限を決めることにした。**それが、限度額を下げるという発想である。

セーフティボックスは、信用していない

ついでに書いておくと、私はホテルのセーフティボックスを使わない。

理由は2つある。

1つは、過去に一度、開かなくなったことがあるからだ。

財布とパスポートを入れて、閉めた。そして、取り出そうとしたら開かない。海外のセーフティボックスは機種によって操作方法がまるで違うので、日本での感覚が通用しないことがある。

散々やってみて、どうにもならず、結局フロントに行った。そして、係の人がマスターキーで開けてくれた。

助かった。心底助かった。

そして同時に、思った。この人は、私がいなくてもこれを開けられる。

これが2つ目の理由である。セーフティボックスというのは、**開けられる人間が存在することを前提に作られている。**当たり前だ。客が暗証番号を忘れることなど日常茶飯事なのだから、そうでなければ運用が回らない。

だから、あれは「誰にも開けられない金庫」ではない。**「他の客には開けられない箱」**である。それ以上でも以下でもない。

そう理解した日から、使うのをやめた。

ただし、完全に無策というわけでもない

全部を財布に入れると書いたが、1つだけ例外がある。

現金を2万円分ほど、財布とは別にしている。

置き場所は、普段使っているバッグの中だ。スーツケースではない。

ちなみにこのバッグは、手提げでもショルダーでもなく、体に固定するタイプのボディバッグである。財布はスリに遭うが、体に密着しているものを引き剥がすのは、まったく別の犯罪になる。難易度が違う。

バッグを持ち歩かない場面では、スーツケースに入れて鍵をかけ、部屋に置いていく。

**スーツケースの鍵など、その気になれば数秒で開く。**それは分かっている。だが、セーフティボックスも結局は同じ部屋の中にある。マスターキーを持つ人間が入れる場所という意味では、どちらも変わらない。

つまり私は、**より安全だからスーツケースを選んでいるのではない。**バッグを持ち歩けない時の、消去法である。

そして、この2万円の目的は分散ではない。

財布を失った直後に、動くための金だ。

カードを止めて、再発行を待つ。その間、ホテルに帰るタクシー代すらない、という状態だけは避けたい。現金は止められない代わりに、**額が確定している。**2万円なら、最悪でも2万円の損で済む。

それでもカードを複数持っていく理由

限度額を下げるくせに、カードは複数枚持っていく。矛盾していると思われるかもしれない。

だが、理由はある。

**JCB。**私が普段メインで使っているカードだ。日本での生活はこれで回っている。

**VisaとMastercard。**JCBは海外で使えない場面が多い。これは何度も経験している。だから、この2枚は「使えないときのため」に持っていく。

全部が同じ役割なら、たしかに減らすべきだ。だが実際には、**使える場所が違う。**JCBだけを持っていって、店頭で断られたときに代わりがない、という状況が一番まずい。

なお、保険についてはどのカードもそう大差ないというのが実感である。付帯保険が手厚いから持っていく、という選び方は、私はしていない。

ただし1つだけ注意がある。**多くのカードの保険は利用付帯である。**持っているだけでは適用されず、旅行代金や公共交通機関の料金をそのカードで支払うことが条件になっている。

**自分のカードがどちらなのかは、必ず確認しておいてほしい。**私自身、出発前に毎回確認している。

もっとも、枚数が増えれば全滅したときの被害も増える。**そこは自覚している。**だからこそ、1枚あたりの限度額を下げているとも言える。

下げることのデメリットも、正直に書く

いいことばかりではない。

まず、戻すのに時間がかかる。

限度額はネットから変更できる。ただし、**即座に反映されるとは限らない。**カードによっては、申請してから数日かかることもある。中には、そもそも希望通りに戻してもらえない可能性もある。

つまり、現地で足りなくなっても、その場では対処できないと思った方がいい。

もう1つが、ホテルのデポジットだ。

チェックイン時に、保証として枠を押さえられることがよくある。金額は300ドル程度、日本円で4万5,000円ほどだろうか。限度額30万円なら、それだけで15%が消える。

複数のホテルを渡り歩く旅程だと、解放されるまでのタイムラグで、これが重なることもある。

それでも、30万円で足りている

とはいえ、私はこれで困ったことがない。

具体的な数字を出しておく。家族4人で東南アジアを4カ国、10日間まわったとき、現地で使ったのは20万円ちょっとだった。

なぜこの額で収まるのか。理由ははっきりしている。大きな支払いは、全部日本で終わらせているからだ。

航空券もホテルも、事前に決済している。アクティビティや入場券の類も、ほとんどは予約サイトで先に払ってしまう。現地に着いた時点で、旅程の大半は支払いが済んでいる。

だから現地で発生するのは、その日の飲食と、土産と、細かい移動費くらいのものだ。10日間でも20万円ほどにしかならない。

**1枚あたり30万円という設定は、そこから逆算している。**適当に決めた数字ではない。

だから当然、行き先によって額は変える。

東南アジアのような物価の安い国と、欧米のような物価の高い先進国では、現地で使う額がまるで違う。同じ10日間でも、必要な枠は倍近く変わることもある。

**30万円という数字自体に意味はない。**その旅程で自分がいくら使うのかを見積もって、そこに少し余裕を足す。やっているのはそれだけである。

レンタカーのように大きな枠を押さえられるものも、そもそも事前に予約して準備していくので、突発的には発生しない。国際免許の手配も要るのだから、現地で思いつきで借りることはまずない。

この方法が向かない人

正直に書いておくが、この方法が成立するのは、私が高額な買い物をしないからだ。

円安ということもあるが、それ以前に性格の問題が大きい。旅先で突発的に何かを買うと、私は必ず後で後悔する。

その場では盛り上がる。旅の思い出としても悪くない。だが帰国して、日常の中でそれを眺めたときに、**なぜあれを買ったのかと考えてしまう。**免税店の空気の中でだけ正しく見えていた判断が、家に帰ると正しく見えなくなる。

それが分かっているから、**そもそも買う計画を立てない。**枠が小さくても困らないのは、そういう理由である。

逆に言えば、ブランド品を買うつもりがある人は、限度額を下げるべきではない。

現地で「これを買おう」と決めた瞬間に枠が足りず、しかも戻すのに数日かかる。そのために旅行の目的が果たせないなら、本末転倒である。

**同じことは、現地決済中心で旅程を組む人にも言える。**ホテル代を現地で払うスタイルなら、枠は多い方がいい。

買う気があるなら、上げていけばいい。**私は買わないと決めているし、大きな支払いは先に終わらせている。だから下げられる。**それだけの話だ。

スマホ決済があっても、万能ではない

最近になって、私もスマホでの決済を使い始めた。シンガポールなどでは重宝している。財布を出さずに済むし、カードを人に渡す場面も減る。

ただし、これで物理カードが不要になるかというと、そうではない。

中国がその典型だ。

誤解されがちだが、中国はキャッシュレスが遅れているわけではない。むしろ逆で、**日本よりはるかに進んでいる。**問題は、その決済がAlipayとWeChat Payという2つの経済圏でほぼ完結していることだ。

日本で使っているクレジットカードのタッチ決済を出しても、**その輪の外にある。**臨機応変に使えるとは言い難い。

決済が遅れている国より、別のシステムが完成しきっている国の方が、旅行者にとっては厄介である。

結局、物理カードは持っていくことになる。持っていく以上、盗られる可能性は消えない。

帰国後、そのまま下げっぱなしにしている

ちなみに、帰国したあと限度額を戻すかというと、戻していない。

面倒だから、というのが正直なところだ。そして、下げたままでも日常生活で困ることがない。そもそも普段使いで困らない額までしか下げていないので、当然といえば当然である。

そして放っておくと、そのうちカード会社が勝手に上げてくる。

真面目に使っていれば、向こうから枠を増やしてくれる。こちらが下げたものを、あちらが上げる。何をやっているのかと思わなくもない。

結局、大した対策ではない

こうして書いてみると、私がやっていることは大したことではない。

分散もしていない。セーフティボックスも使わない。財布を盗られたら全滅する。対策として優れているとは、まったく思わない。

やっているのは、盗られたときに背負う金額を、先に決めておくことだけである。

なぜそこにこだわるのか。理由ははっきりしている。

自分のカードが、自分の知らないところで使われるのが、単純に嫌なのだ。

補償されるかどうかとは別の話だ。金が戻ってくるとしても、その明細を眺めて過ごす数週間が嫌なのである。

だから、上限を決めておく。最悪でもここまで、と分かっていれば、それ以上は考えなくて済む。

臆病だと言われれば、その通りだと思う。

ただ、自分では臆病だとは思っていない。私は計画魔なのである。

大きな支払いは先に済ませ、現地で使う額を把握し、そこから枠を決める。やっているのは、その程度のことだ。

旅行というのは、余計なことを考えずに過ごすためのものでもある。そのために出発前の5分を使うのなら、悪くない取引だと思っている。

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