
前回まで: 大蛇を巻いた7歳、本場のフォー、そしてANAからの欠航メール。偽サイト4連戦を制し、タイの入国申請とバンコクのホテルを確保した我が家は、いよいよ「計画書にないページ」へと踏み出す。
DAY9: 予定外の入国
早朝、プルマンを出発。タンソンニャット空港は「入国であれだけ並んだのだから、出国も」と警戒し、KKdayのファストトラック(入出国セット)の係員に迎えに来てもらった——のだが、出国は日本国内地方の空港レベルの空き具合だった。課金は保険で終了。まあ、保険とはそういうものだ。
ちなみにベトナムの身体検査はゲート前方式ではなく、通常方式だった。ここに3カ国比較が完成する: シンガポール=ゲート前、マレーシア=ゲート前、ベトナム=通常。旅は続けると、こういう無駄な知見が溜まる。
検査後、朝食を求めて制限エリアに入ると、物価が外の5倍。それでも最後の一杯として、フォーで締めた。ベトナムでの最後の食事も、フォー。悔いはない。
機内食が、パッタイだった
ホーチミンからバンコクへのフライト。配られた機内食のフタを開けて、思わず笑った。
パッタイである。
計画書には「バンコク乗り継ぎの2時間25分で、空港でパッタイを食べる」と書いてあった。それが、フライング中にフライングで出てきた。
味は——まあ、機内食だった。地上で食べられるタイミングは、あるのか、、、。
4歳連れ、優先レーンに通される
スワンナプーム空港に到着。緊張の入国審査——4歳連れということで、優先レーンに通してもらえた。 子連れの数少ない特権が、ここぞの場面で発動した。
そして4度目の正直で申請したアライバルカードは、問題なく機能。入国、めっちゃスムーズ。 偽サイトと戦った2時間が、ここで報われた。
空港のATMでは、クレカキャッシングがタイでも一発成功。最終成績を発表する——シンガポール全滅、マレーシア○、ベトナム○、タイ○。初日の全滅だけが、いまだに謎である。
Grab乗り場から乗車し、ノートラブルでホテル方面へ。旅の序盤、チャンギでスーツケースを置き去りにした家族と同一とは思えない手際だ。10日間の経験値は、ちゃんと積み上がっていた。
宿はサマセット・スクンビット(プラカノン駅近く)。空港と市内の中間という立地は、翌朝7時に空港へ向かう我が家のための布石である。急いで取ったホテルでも、立地判断だけは外さない。
チェックイン20分後、再出撃
時間がない。せっかくの予定外の1日、観光しない手はない。チェックインからわずか20分で、Grabに乗り込みワットポーを指定した。
——バンコクの渋滞を、なめていた。
道はびっしり詰まり、結局1時間。車内では7歳も4歳も撃沈し、実は父もつられて寝落ちした。ワットポーに着いた頃には家族の75%が寝起きである。
涅槃仏の前で

靴を脱いで堂内に入ると、全長46メートルの黄金の涅槃仏が横たわっていた。
——そう、この旅行記の冒頭のシーンに、物語がようやく追いついた。
寝起きの子どもたちも、これには目が覚めたらしい。端から端まで歩き、足の裏の螺鈿細工までしっかり見て、写真を撮った。父は半袖短パンにサンダルだったが、問題なく入れた(涅槃仏堂、服装は意外と大丈夫だった)。
周囲の極彩色の仏塔群も「きれいだね」「すごいね」と眺めて回ったが、6月のバンコクの昼は凶器である。暑すぎて撤退。 神秘というのは、気温と湿度が適度な状態じゃないと感じられないものらしい。
タイに来て、韓国料理が大正解
タクシーでチャオプラヤー川沿いの巨大モール、アイコンサイアムへ。ここでスタバのタンブラー「バンコク」を確保し、コレクション4カ国コンプリートを達成した(マグネットも、ベトナムとタイは空港で回収済み。4カ国コンプ)。
夕食は当然パッタイ——のつもりでタイ料理店の前まで行ったのだが、メニューを見た子どもたちの口に合わなそうで、隣の韓国料理屋へ方針転換。結果、めちゃくちゃ大正解。
タイに来て、旅のヒット飯が韓国料理。計画書は、最後までこういう予定外に書き換えられていく。

渋滞の学習成果: 帰りは電車
同じ建物でお土産を買い込み、帰路へ。行きのワットポー渋滞1時間で学習した我が家は、タクシーを捨てて電車を選んだ。アイコンサイアム直結の駅から乗り換え2回、約1時間かけてプラカノンへ。切符は現金で券売機購入。
初日にスーツケースを置き去りにした家族が、最終日には初見の都市で乗り換え2回をこなしている。旅は人を育てる。
DAY10: 帰国
朝、Grabで約30分、スワンナプーム空港へ。噂通りのだだっ広さだったが、チェックインも検査もスムーズ。制限エリアで子どもたちにサンドイッチを与え、父は単独でラウンジへ走りジュースを確保して戻る(ナイトサファリのソロ1時間並びに続く、父の単独ミッションである)。
9時35分、離陸。10日間の旅が、終わりに向かう。
18時頃、羽田着。入国はスムーズ——だったのに、荷物のターンテーブルでエグく待たされた。 ANAなのに、なんで……。さらに、台風遅延の影響で到着が第3ターミナルから第2ターミナルに変わっており、車を停めた第3の駐車場まで最後のターミナル間移動が発生。
旅は、最後の最後まで「計画にないページ」で締めくくられた。
エピローグ: 「何が一番楽しかった?」
帰国からしばらく経った今も、家族でよくあの旅の話をする。
ナイトサファリの暗闇。272段の階段。首に巻いた大蛇。黄金の涅槃仏。台風がくれた予定外の1日。……親としては、どれが一番と言われても選べない10日間だった。
で、子どもたちに「何が一番楽しかった?」と聞くと、答えはいつも同じである。
「マーライオンと、プール!」
……両方とも無料で行けるやつじゃないか。
マーライオンは像を見るだけ。プールなら近所にもある。親が数十万かけて計画した4カ国周遊で、子どもの心に残ったのは、無料の像と、水である。
でも、それでいいのだと思う。残るのは計画書の完成度でも、巡った観光地の数でもなく、家族で笑った時間だけだ。台風で計画が崩れた1日が、父の一番の思い出になったように。
計画を立てるのは、旅を縛るためじゃない。予定外が起きたときに、慌てず楽しむ余裕を作るためだ。
次の旅も、私はきっと完璧な計画書を作る。
そして、それが裏切られる瞬間を、少しだけ楽しみにしている。

おまけ: この旅の記録
旅のベスト飯
- 本場のフォー(ホーチミン・ベンタイン市場近く)——「もう一回食べたい」全員一致
- 松發のバクテー(シンガポール)——ビブグルマンは伊達じゃない
- 韓国料理(バンコク・アイコンサイアム)——まさかのタイでヒット
- ケバブ(クアラルンプール)——夜食の暴力
旅のワースト飯
- チェンドル(KL・セントラルマーケット)——緑のムニムニ、無念
- ツアー昼食(クチトンネル)——まずくもなく、おいしくもなく
- 機内食のパッタイ——回収はされたが、満たされてはいない
コレクション最終成果
- スタバタンブラー: 4カ国コンプリート
- マグネット: 4カ国コンプリート(後半2カ国は空港で滑り込み)
- ユニクロ限定Tシャツ: シンガポール(ミッキーデザイン4枚)+ベトナム(フォー・ノンラー等4枚)、計2カ国コンプ
- 世界に4つだけのセメントコースター(シンガポール・貸切ワークショップ製)
4歳・号泣カウント: 2(ミニオン、恐竜)——ただし272段は自力完登 7歳・武勇伝カウント: 2(サルに挑発される、大蛇を首に巻く)

