あまり褒められた話ではないので、先に謝っておく。
家の中の、私の正装
在宅で仕事をしていると、家の中の服装は限りなく自由になる。
私の場合、下はトランクスである。下着だ。そして梅雨の頃から10月あたりまで、つまり1年のうち4、5か月ほどは、上がタンクトップになる。
上はタンクトップ、下はトランクス。この格好で、家の中をうろうろしている。ちょうど今が、そのシーズンの終わりにあたる。
188cmの男がこの格好で廊下を歩いている光景は、家族にとってはもう見慣れたものだと思う。見慣れていてほしい。
上半身だけが、出世していく
さて、オンライン会議である。
会議の中身によって、上半身の格好は変わる。社内の定例会議のような、気心の知れた相手との場なら、タンクトップの上にシャツを1枚羽織る。それで終わりだ。
外部の人との、少ししっかりめの会議になると、タンクトップをTシャツに着替え、その上にシャツを羽織る。少し綺麗めの状態に仕上げる。
タンクトップ、シャツ、Tシャツとシャツ。相手が変わるたびに、上半身は一段ずつ出世していく。
ただし、どちらにしろ、下半身はトランクスのままである。
下半身は、一度も出世したことがない。
胸から上で、社会は回っている
会議は自分の部屋でやっている。カメラは人物だけを切り抜く設定にしていて、背景は合成だ。
つまり画面の向こうに届いているのは、合成の背景と、シャツを羽織った胸から上だけである。部屋の散らかりも、私の下半身も、相手には一切届かない。
考えてみると、オンライン会議というのは、隠すための技術でできている。背景を合成して部屋を隠し、シャツを羽織って下着を隠す。それで何の問題もなく、仕事が進んでいく。
私の社会的信用は、胸から上だけで成り立っている。

危ない瞬間は、ある
もちろん、危ない瞬間もある。
会議の最中に、宅配便が来たことがある。立ち上がらなければならない。そういうときは、パソコンについているカメラのプライバシーシャッターを、シャッと閉める。相手の画面からは、私が真っ黒になって消える。音声も切る。
立ち上がるのは、そのあとだ。順番を間違えると、取り返しがつかない。
子どもが部屋に入ってくることもある。
夕方以降の打ち合わせは、会議というより、ちょっとしたテレビ電話のようなものが多い。そこへ「パパー」と子どもが入ってくる。あっちに行ってなさい、とはあまり言わない。普通に抱っこして、画面に一緒に映る。こちらが上の息子で、こちらが下の娘です、と紹介するくらいである。
誤解のないように書いておくと、子どもはこちらが呼んでいるわけではない。勝手に入ってくるのである。そのとき画面に一緒に映るかどうかは、相手による。ちゃんとした商談の最中なら、さすがにそうはしない。ただ、社内の身内との打ち合わせくらいなら、まったく問題ないと思っている。
相手の下半身は、考えない
画面の向こうの相手の下半身のことは、もちろんだが、まったく考えたことはない。
ただ、書いていて思ったことだが、羽田空港で見かけるスーツ姿の集団だ。対面ではきっちりネクタイを締めていたあの人たちは、オンライン会議のときも、下までちゃんと履いているのだろうか。
たぶん、履いているのだろう……。そう願いたい。
対面のときは、さすがに履く
念のため書いておくと、対面の打ち合わせのときは、もちろんちゃんと履いて出かける。
トランクスで行ったら、商談の前に警察と長い面談をすることになる。
