空港ラウンジの記事を検索すると、どれも似たようなことが書いてある。ラウンジは快適だ、食事が無料だ、家族でも使える、だからこのカードを持つべきだ。
嘘は書いていないと思う。私自身、プライオリティパスにはかなり助けられている。
ただ、家族4人で入ったときにいくらかかるのかを、真面目に計算している記事は少ない。
私は年に20回ほどラウンジを使っている。完全に元が取れている自信がある。それでもなお、家族旅行で使おうという気にはなれない。
なぜそうなるのか、実際の数字とともに書いていく。
年20回。1人で使う分には、圧勝している
まず、私が元を取れている側の人間であることを先に書いておく。
年会費は3万円台。それに対して、今年はすでに20回近くラウンジに入っている。1回あたりの利用料金を35米ドルと考えれば、とっくに年会費を超えている。
ただし、この20回はほぼ全部が出張である。
先日の中国出張も、羽田で1回、帰りの香港で1回入った。**移動が1往復あるだけで、ラウンジの利用は2回になる。**出張が月に何度もある人間にとって、この積み上がり方は早い。
年会費3万円台に対して1回3,000円強の価値。年に10回使えば元が取れる計算である。私はその倍を使っている。
だから、出張で使う限りにおいて、これは間違いなく持つべきものだ。

元が取れる理由は、休憩ではなく食事である
ここは誤解されやすいところだと思う。
ラウンジというと「静かに休める場所」というイメージが先に来る。実際そうなのだが、私にとっての価値の大半は食事だ。
空港の飲食は、とにかく高い。マクドナルドに入っても1,000円から1,500円は飛んでいく。少しちゃんとした店に座れば、あっという間に数千円になる。空港というのは、そういう値段設定の場所である。
ラウンジに入れば、食事もソフトドリンクもスナックも、全部込みだ。アルコールも置いてあるが、私はまず飲まない。
浮くというより、高いレストランに入らなくて済むという言い方の方が正確かもしれない。出発前の1時間をどこで過ごすかという話でもある。座るだけで数千円かかる場所と、資格を持っていれば入れる場所。この差が、年20回分積み上がる。
ところが、家族で入ろうとすると話が変わる
さて、本題である。
私が使っているのは、あるカードに付帯しているプライオリティパスだ。プレステージ会員という区分になっていて、本人は何度でも無料で入れる。
問題は同伴者である。
同伴者は、1名につき35米ドル。無料枠はない。
そして、家族カードにプライオリティパスを登録することもできない。上位のグレードなら同伴1名無料や家族カード登録が可能なのだが、私の区分ではどちらも使えない。
つまり、家族4人でラウンジに入る場合、こうなる。
私は無料。妻が35ドル。息子が35ドル。娘が35ドル。
合計105米ドル。
1ドル155円で換算すれば、1回の入室で1万6,000円ほどである。
年会費を3万円台払っているカードを持っていて、なお、である。家族で2回入れば、それだけで年会費と同じ額になる計算だ。
なお、子どもの料金については例外がある。国内のあるラウンジでは、4歳未満が無料だった。実際に無料で通してもらった。ただしこれはプライオリティパス全体の統一ルールではなく、ラウンジが独自に設定しているものである。大人と小人で料金を分けている施設もある。
自分の使う空港がどうなっているかは、その都度確認するしかない。
その金額を払って食べるものか、と考えてしまう
念のため書いておくが、ラウンジの食事が悪いわけではない。
最近の羽田だと、朝一番の便に合わせてカレーが出ている。唐揚げもあるし、おにぎりもある。カヌレのようなデザート類も置いてあって、アルコールも提供されている。普通に朝食として成立するレベルだ。
昔の成田では、寿司が出ていた記憶がある。あれはさすがに驚いた。
だから、内容に不満はない。
ただ、それを1万6,000円払って食べるかと言われると、話は別である。
家族4人で空港のフードコートに入れば、6,000円か7,000円で済む。その差額に1万円出す価値があるかどうか、という話になる。
ちなみに私は、**ラウンジでアルコールを飲むことがほぼない。**出張のときも飲まない。もともと積極的に飲む方ではないし、これから何時間も飛行機に乗るのに、わざわざ飲もうとは思わない。
ラウンジの価値としてアルコール飲み放題を挙げる記事は多いが、そこに価値を感じない人間にとっては、その分の元は取れていないということになる。家族連れならなおさらだ。
私は、差額を出す価値はないと判断した。
同じ資格で入れるのに、質は空港ごとにまるで違う
もう一つ、意外と知られていないことがある。
プライオリティパスで入れるラウンジの質は、天と地ほど違う。
深圳の空港で入ったラウンジは、正直ひどかった。食事として置いてあったのはカップラーメンである。あとは、かごの中にりんごなどのフルーツが少し。それだけだった。
同じ資格で、羽田では唐揚げとカレーとカヌレが出てくる。深圳ではカップ麺が出てくる。
カードの案内には、そこまで書いていない。
もちろん深圳が例外的にひどかっただけで、それ以外の空港は基本的に満足できるレベルだった。ただ、「プライオリティパスがあれば、どこでも豪華なラウンジに入れる」という認識は、事実と違うということは言っておきたい。

子連れで浮くことはない。ただし、子どもは退屈する
家族で入ったときの実感も書いておく。
まず、**周りがビジネス客だらけということはなかった。**普通に子連れもいるし、海外の家族連れも珍しくない。ラウンジというと静まり返った場所を想像するかもしれないが、そこまでではない。
だから、**気を遣って肩身が狭い思いをすることはない。**普通に過ごせる。
ただし、子どもが楽しんでいたかというと、そうでもなかった。うちの2人がやっていたのは、デザートを食べていたことくらいである。
考えてみれば当然で、あの空間は大人向けにできている。静かに座って、飲んで、食べて、時間を潰す場所だ。子どもにとっては、ただの少し豪華な待合室でしかない。
そこに1万6,000円である。
混雑して入れないこともある
もう一つ、忘れてはいけないのが混雑だ。
香港の空港では、入れなかったことが何度かある。
法則のようなものがあって、**出国審査を抜けてすぐの、食事ができるラウンジはほぼ常に混んでいる。**当たり前で、みんなそこを目指すからだ。
一方、搭乗口の奥の方まで歩いていった先にあるラウンジは、比較的空いている。歩く距離と混雑具合が反比例しているというのが、私の実感だ。
家族4人で1万6,000円払う覚悟を決めて向かった先が満席、という可能性もある。確実に入れる保証はないということは、頭に入れておいた方がいい。
白状すると、あまり褒められた使い方もしている
ここまで真面目に損得を書いてきたが、正直なところ、私はもう少しみみっちいこともしている。
韓国、シンガポール、マレーシア、中国あたりのラウンジでは、飲み物が缶やペットボトルの状態で並べてあることが多い。**「ご自由にお取りください」**と書いてある、あれだ。
私はそこに1人で入る。そして、出てくる食事をぱぱっと済ませ、飲み物を人数分プラス2、3本、リュックに詰めて出る。
それを、外で待っている家族に配る。
家族4人で入れば1万数千円かかるところを、**私1人が入って、飲み物だけ持ち出して分配する。**書いていて自分でも思うが、あまり格好のいい話ではない。
ちなみに、これができない場所もある。日本と香港のラウンジは、その場でグラスに注いで飲むタイプが多い。持ち出しようがない。あちらは「ラウンジで過ごす」ことを前提に作られているのだろう。
当然だが、**持ち出しを禁止しているラウンジもある。**そこに書いてあるルールが全てである。
それでも、家族4人分の入室料を計算した後だと、この程度のみみっちさは許されるのではないかという気になってくる。
家族で使うのは、無料券があるときだけだ
では、家族では絶対に使わないのかというと、そういうわけでもない。
ただし条件がある。無料券があるときだ。
航空券を予約するサイトによっては、ラウンジの利用券が特典として付いてくることがある。私も一度、それで家族と一緒に入ったことがある。そのラウンジがたまたまプライオリティパスの対象施設でもあったというだけの話で、私自身の資格を使ったわけではない。
使うとすれば、こういう場合である。**手元に無料券があって、なおかつ搭乗までの時間に余裕がある。**この2つが揃ったときだけだ。
逆に言えば、待ち時間が長いというだけの理由で、105ドルを払うことはない。
仮に無料券が足りず、あと1人分だけ35ドル払えば全員入れる、という状況なら出すかもしれない。だが、3人分で105ドルとなると、もったいないという気持ちが完全に勝つ。
待合スペースで座る場所を探すのは面倒だ。それは分かっている。だが、その面倒を1万6,000円で買うかと言われれば、買わない。
結論:誰が持つべきか
長々と書いたが、結論は単純だ。
**出張が多い人は、持つべきである。**これは断言できる。私のように年に何度も飛ぶなら、年会費は簡単に回収できるし、空港での食事代を考えれば実質的にはもっと得をしている。
**年に1回しか海外に行かない人には、必要ない。**往復2回のために3万円台の年会費を払うのは、どう計算しても割に合わない。
そして、その中間にいる人へ。
**すでに持っているクレジットカードにプライオリティパスが付いているなら、使えばいい。**あって困るものではないし、使えば使うほど得になる。
だが、そのためだけに高い年会費のカードを作る必要はないと思う。ラウンジは、そこまでして手に入れるものではない。
結局、回数の問題でしかなかった
こうして並べてみると、プライオリティパスというのは贅沢品ではなく、単なる回数券のようなものだと分かる。
たくさん使う人には得で、たまにしか使わない人には損。それだけの話だ。ラウンジが快適かどうかは、実は本質ではない。
私は出張のたびに、当たり前の顔をしてラウンジに入る。年会費のことなど考えたこともない。それくらい、出張においては手放せない。
だが同じカードを持って家族旅行に行くと、入口の前で立ち止まって、電卓を叩くことになる。そして大抵、通り過ぎる。
同じ1枚のカードなのに、である。
カードは何も変わっていない。変わったのは、連れている人数だけだ。
そして私は、家族を連れてフードコートへ向かう。
